背景

2050年に地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業創出を実現させるためには、増加する20億人を含む約100億人の個々人が食事を満足に摂取できるよう、食べられるのに捨てられている食材等を活用し、供給物に対する合理的な消費体系を構築することが求められます。本プロジェクトでは、未利用食材(余剰・規格外等)をおいしく消費するための技術開発を進め、食品ロス削減とQoL向上とを同時に実現する、個々人に適したおいしい、パーソナライズド食品を提供する革新的な食ソリューションシステムを構築することにより、課題解決と目標実現を目指します。

 

研究内容

本プロジェクトでは、以下の4つのテーマに取り組んでいます。

1.プリント食材の調製と特性解析
 世界では食料生産量の3分の1の食料(約13億トン)が毎年廃棄されています(FAO報告書)。また日本では年間約600万トンもの食料が捨てられています。
 本課題ではフードロス削減に貢献するため、サプライチェーンの生産・収穫・加工段階で発生する余剰・規格外農産物等を含めて無駄なく長期保存化し、3Dフードプリンターの規格に応じた食材カートリッジ(粉粒体)の開発とデータ連携による食ソリューション実現に向けた食材の特性データのDB化を進めてまいります。

 

2.3Dプリント食品の風味・食感評価法の開発
 固形食品がおいしい理由の1つは、食品構造と食品成分の分布が不均一であることです。食品ごとに異なる食品構造と味・香り成分や水分の分布と、ヒトが食べた時に感じているおいしさの感覚の関係を数値化・パターン化することは、3Dフードプリンタでおいしさを再現したり、新たに創出したりするために必要です。

 本課題では、固形食品の摂食時に起こる味・食感・香りの経時的な変化のパターンを、生体信号計測と機器計測のデータを利用してデジタル情報化し、健康・機能性を有する食材をおいしく感じるように立体的に配置するための設計情報として活用することを目指します。

 

3.データ駆動型3Dフードプリンティングシステムの開発
 本課題では、完全にパーソナライズされたプリント食品を消費者に提供するためのAI搭載の3Dフードプリンティングシステムを構築いたします。システムの開発項目として、粉粒体やペーストなど効率的かつ衛生的なハンドリング手法の開発、プリント食品を加工しての効率的ポスト加熱法の開発、パーソナライズド食品製造のためのAIの導入などを実施いたします。また、プリンタビリティの解明のため、プリント食品の原料基礎特性ダイナミクス解析を実施することで多種多様な食材に対応いたします。

 

4.食テクスチャーデータベースの構築
 「おいしさ」の構成要素は、フレーバーとテクスチャーに大別されます。3Dプリント食品ひいては3D-AIシェフマシンが形成する食材や料理を「おいしい」と感じられるものにするために、和の食文化や、世界的にも有数のオノマトペを擁する日本語の特性を活かすことによるテクスチャーの創造をめざしています。本課題では、食に携わる幅広いユーザー層を対象に、調理の基盤となる食材のテクスチャー等の属性情報や、食材の調理工程を共有可能とし、食に関する新しいソリューションの展開に資するデータベース構築に取り組んでいます。